ファミリーオフィスとは?資産運用の舞台裏

富裕層が信頼を寄せる、資産管理を超えた仕組み
資産運用や事業承継において、富裕層が注目する「ファミリーオフィス」。
これは、単なる資産管理を超え、一族の理念や価値観を次世代へ継承するための組織です。
欧米では一般的ですが、日本でもその必要性が高まっています。
ファミリーオフィスは、資産が一定額以上の富裕層を対象に、資産管理および運用サービスを提供する組織を指します。
その額に明確な規定はありませんが、基本的には100億円以上の資産を保有している同族・一族が対象です。
ファミリーオフィスの使命は、一族の持続的成長を促し、またファミリーを構成する各メンバーが密なコミュニケーションを通じて一族が持つ理念の共有をできるように促すことにあります。
多角的な機能とサービスで支える「究極の資産管理」
ファミリーオフィスの特徴は、資産管理の専門家を集めた「究極のプライベートバンク」とも言える点です。
法律・財務・教育など様々な専門家が1つのチームとなって取り組み、現金や株式といった特定の金融資産を対象にするのではなく、多様な視点からより包括的に管理を行います。
これにより、資産の増加だけでなく、一族の価値観や使命の継承も可能となります。
ファミリーオフィスには主に3つの種類があります。
一族が単独で運営する「シングル・ファミリーオフィス」、複数の一族が顧客となる「マルチクライアント・ファミリーオフィス」、そしてプライベートバンクや金融機関のサービスを活用する「コマーシャル・ファミリーオフィス」です。
それぞれ、資産規模やニーズに応じて選択されます。
また、ファミリーオフィスの主なサービスには、資産管理に関わる会計・経理事務、投資に関する助言・アドバイス、資産・事業継承に関する計画の策定および実行、医療や教育に関する助言や監視、一族の人間関係の調整などがあります。
これらのサービスを通じて、一族の資産を守り、次世代へと継承することが可能となります。
日本での普及の壁と、再注目される契機
日本では、創業者の一族が企業経営を担っている、もしくは株式を保有している企業が全法人の9割以上を占めると言われています。
しかし、100億円以上規模の資産を保有しているファミリー向けのサービスであっても、ファミリーオフィスの普及が進んでいないのが現状です。
その理由として、日本の伝統的なファミリービジネスは長期的に経営が続いても、それに伴って規模が大きくなっているとは言えないことや、
一族の事業の経営方針に対してコンセンサスをとる組織を新設することに対する懸念、
日本人の預金第一主義が資産運用への意識を低下させている現状などが挙げられます。
しかし、2021年の「アルケゴス問題」をきっかけに、日本でもファミリーオフィスの存在が注目されるようになりました。
この事件は、アルケゴス・キャピタルというファミリーオフィスが引き起こした投資の失敗により、欧米や日本の金融機関が多額の損失を計上する結果となりました。
この出来事が、日本においてもファミリーオフィスの重要性を認識させる契機となったのです。
資産と価値観をつなぐ未来志向の仕組み
ファミリーオフィスの設立方法としては、一族が株主で、なおかつ一族の事業をコントロールできる資産管理会社や持ち株会社にファミリーオフィスの機能を設置する方法があります。
また、ファミリーオフィスの機能をサービスとして提供している企業を活用する方法もあります。
これらの方法を通じて、一族の資産を守り、次世代へと継承することが可能となります。
ファミリーオフィスは、資産管理だけでなく、一族の価値観や使命の継承、次世代への教育、ライフスタイルのサポートなど、多岐にわたるサービスを提供します。
これにより、一族の持続的な繁栄を支えることが可能となります。